第42章 …………マリーなんとか 乱凪沙 前編
「………というわけなのだよ」
とりあえず私の部屋でジュンに今までのことを一通り話した。
ほとんど愚痴だったがジュンは聞いてくれた。
「で、結論は?」
「控えめに言って死にたい」
「生きてくださいねぇ」
未だにパジャマの私は、着替える気にもならずベッドの上でごろ寝しながらジュンと話していた。
ジュンはベッドに腰を下ろしている。
「このままベッドと同化して消えたい」
「結婚式目前にして花嫁が消えるとか前代未聞っすよぉ」
彼は大きな欠伸をした。………やはり眠たいのだろう。
「いつものことながら、おひいさんがここに来たいって言い出したんすよ。あんずさん達が心配だからって。」
「……………高校に戻って凪沙さんに出会わない人生歩みたい」
「………………………あのねえあんずさん」
ジュンはすっかり鬱モードになった私の頭をぺしっと一回叩いた。
「しっかりしてくださいよ。結婚したくないんすか。それともあの人のこと嫌いなんですかぁ?」
「……………………」
「ちょっと、話し聞いてます?」
「あー、今、頭…まわんないや……」
あはは、と無理に笑った。
私の口調が普通に戻ったことに、ジュンは驚いていた。夢ノ咲学院に女一人で転校することになった私は……男の子に舐められるのが嫌で、男の子らしいしゃべり方を始めた。
それが癖になって、まるでキャラ付けのようになった。
「……………あー、うん、そうだね…私…」
「あんずさん………」
ジュンは大きなため息をついた。
「話すきっかけ、作ってやるんで感謝してくださいよ」
そして彼はそのままドサッとベッドに倒れこんだ。
そのうち規則正しい寝息が隣で眠るジュンから聞こえてきた。
え、ガチ寝?
嘘だろ、とか思ってたらガチャリとドアが開いた。慌てて私は瞼を閉じて寝たふりをした。
日和さんだろうが凪沙さんだろうが、この状況はちとまずい気がした。