第42章 …………マリーなんとか 乱凪沙 前編
あのまま外にはいられなかったので、事務所の方々が車で凪沙さんと私が暮らしている家まで私たち三人を送ってくれた。
とりあえずリビングのテーブルに座ると凪沙さんが口を開いた。
「………ごめんね」
「閣下、外出するときは少しくらい変装を…」
「………気を付ける」
「このやり取りも何回目か…」
肩を落として項垂れる茨の肩に、元気を出せと手を置いた。
「………ところで茨とあんずさんは何してたの?」
「打ち合わせですよ、一週間後にEdenの仕事があるでしょう?Eveの人達はお仕事で不在ですけど。」
「………何で私は呼ばないの?」
少し怒っているのだろうか。声が低くなった。
茨が頭を抱え出す。抱えたいのは私だ。
「ちゃんと伝えました。」
「…………聞いてない」
「石ばっか触って私の話なんて聞いてなかったのでは!?メールも書き置きもしておきましたけど!!」
さすがにムカついて声が大きくなる。
凪沙さんはドタドタと二階へ上がっていく。
書き置きを見に行ったのだろう。
「茨、麦茶でいいか?」
「ありがとうございます!俺なんかに気を遣わなくてもいいのに!!あんずさんはいい奥さんになりそうですね~。」
「黙ってろ」
「真っ赤になって!可愛らしい!!」
ああああまじでコイツ嫌いいいいいいいい
でも凪沙さんの相棒だし仕事相手だし……
「………茨、あんずさんを口説かないでほしい」
いつの間にか凪沙さんが戻ってきていた。部屋に置いた書き置きは見てくれただろうか。
「な、口説かれてなど!」
「そうです!ありのままを言っただけです!」
「黙ってろ」
私達のやり取りには突っ込まず、マイペースに謝ってきた。
「………ごめん、書き置き見てなかった。あとメールも。話も聞いてなかった。」
「そんな素直に…」
「陰険な茨よりずっといい。」
「すみません!!」
やはり三人もいると賑やかだ。特にお喋りな茨がいると、ね。