第42章 …………マリーなんとか 乱凪沙 前編
「凪沙さんはともかく、どうしてジュンや日和さんは不在なのかね?」
「Eveのお二人はお仕事がありまして!」
「チッ、次からはEveのいる日に……いや茨のいない日に打ち合わせをするか」
「聞こえてますよ!?」
個室とはいえ、あまり騒いだり長居は良くないだろう。とりあえず勘定をすませ店を出た。外に出るときに変装なしは不味いので茨は帽子を深くかぶった。
「おお、馬子にも衣装かい」
「わかりやすい悪口ありがとうございます!」
「悪口言われてありがとうはどうかしてるぞ…」
「あ、駄目でした?」
そうして店を出たところで、茨が満面の笑みを浮かべた。
「あんずさんあんずさん、閣下がいらっしゃいましたよ!」
「え、君がいないと五分で迷子になる凪沙さんがかい?冗談はよし子さんだよ」
「閣下をなんだと思ってるんです!?あとそのネタ古いですよ!?」
茨が指差す方を見ると…………
とんでもない女の子の大軍に囲まれた、全く変装していない凪沙さんが目に入った。彼はキャラ付けも忘れてオロオロとしている。
「いやいらっしゃいましたよじゃないね!?女の子にもみくちゃにされてるうちに来ちゃった感じじゃないかね!?」
「おお!さすがの推測です!!」
「今こそその慇懃無礼な態度を改めるときだ!!誉めてる場合か!?」
「もうどうしようもないかなと!」
諦めてしまった茨は何だか清々しい。
………………放っておくか?
「凪沙さん、めっちゃこっち見てないかい?」
「助けてと訴えていますね」
「………しょうがない、事務所に連絡して収集つけてもらおう。」
「この俺が連絡しましょう!!」
こういうときだけはパパッと動く。その後、警備員が動員されたりと大変なことになり、凪沙さんがこってりとしかられたのは言うまでもない。