第41章 君は高校生だった 天満光
「ねえ天満くん」
雨で冷えて体が震えてくる。それを隠すように、私は彼に笑いかけた。
「大丈夫だよ」
ありきたりな言葉だけど、伝えないよりはマシ。
「起こられるのが嫌なのはわかる、わかるよ。だから私は今の天満くんを責めたりしない。でも天満くんは知ってるよね、どうして皆が君を怒るのか。」
天満くんは無反応だ。でも、やはり彼は嘘がつけないらしい。顔に出ている。
彼は肯定していた。
「皆、天満くんのことを思ってくれてる。だから言い方が強くなるの。怒られてばかり…確かにそう。君は怒られてばかり。
でもね、先輩達も先生達も、怒ってるだけじゃないよ。ちゃんと見てるよ君のこと。ちゃんと君のこと誉めてくれてるよ。
そのこと、忘れないでね」
天満くんの顔に、少しずつ明るさが戻っていく。
「…………俺」
「うん?」
「にーちゃんに酷いこと言った………」
「……謝りに行こうか。まだ帰ってないいけれど。」
とはいっても、先輩はこんな状態の天満くんをおいて帰りはしない。他のメンバーもきっと待ってる。
「あ、でもまずはねーちゃんにごめんなさいなんだぜ!!雨の中ごめんなさい!!」
「あー、気にしないで気にしないで」
「気にするんだぜ~!!ねーちゃん、俺とぶつかったときに右足ケガしてたの、知ってるんだぜッ!!」
「え?」
天満くんがそう言ってくるが、ケガなんてした覚えはない。
「無意識に庇ってるだけなんだぜ!」
「君、無意識なんて言葉知ってたんだ」
とりあえず、思いっきり右足でダン!!とどろどろになった公園の土を踏み鳴らすと………
「痛ッ!?」
「もーほらーーー!!ねーちゃん傘しっかり持ってて!!ほら、乗るんだぜ!!」
天満くんが屈んで背中を向ける。………おんぶってこと?
まあこんだけ痛いと歩ける気がしないし、甘えさせてもらおう。
「よし!いくんだぜ~!!学院へ!!」
「ちょ、天満くん…!」
彼は勢いよく走り出す。
そんなに背は高くないのに、肩幅が広い。肩もゴツゴツしてるし、背中もたくましい。
言動とは裏腹に、やはり彼も男子高校生だ。
それは……グラウンドでぶつかったときから、わかっていた。
ぶつかって吹き飛ばされた私を庇ってくれるなんて思わなかったから
ま、結局ケガしとゃったけど!!