第41章 君は高校生だった 天満光
天満くんを探しているうちに、ローファーの中に雨水が染み出した。傘だけ持って飛び出したものだからスマホで今何時かを調べることもできない。
もしかしたら、自分の家に帰ったのかな。
人間の頭は便利だ。都合のいい解釈をしてしまう。
とりあえず戻ろう。rabbitsの人達はがっかりさせてしまうけれど。
そしてしばらく歩くと学院近くの公園が見えてきた。
月永先輩がよくいる場所だ。
あの予測不可能な王様も、今日はさすがにいない。
かわりにいたのは、
私が探していた彼だった。
一人、ブランコに座ってジイッと地面を見つめている。
「天満くん」
慌ててかけより、傘を差し出す。そうしたら当然のごとく私が濡れるがかまわない。
「………体冷たくなってるよ」
優しく、彼の肩に手を置いた。
ヒンヤリとした体温が伝わってくる。
「……………ねーちゃん」
天満くんは、今にも泣きそうな目で私を見つめた。
………らしくない。何かあったのだろうか。
「なあに?」
とりあえず話を聞かないと。事が全く進展しない。
「……………俺…ダメな子なんだぜ…いい子じゃない…三毛ちゃん先輩とかせんせぇにたくさん怒られるから…」
シュンとして、元気のない声で彼は告げる。
要領を得ない発言だが、ざっくり言うと…
「たくさんの人に怒られて、落ち込んでるの?」
「うん…」
当たりらしい。
まあ確かに天満くんは怒られて当然のことをしている。廊下は走るし、まだどこか幼いし…………。
私はそういうの、別にいいと思うけど。言ってしまえばこの子の個性なんだし、尊重してあげないと。
個性を否定され続けると、今日の天満くんみたいになってしまう。
(………………雨、止まない)
差し出した傘を天満くんは受け取ろうとしない。雨は容赦なく私を打ち付ける。
彼は、どれだけの間この雨に打たれていたのだろう?