第41章 君は高校生だった 天満光
「雨だとダッシュ出来ないんだぜ~」
悲しげに天満くんが呟く。
さすがに天候まではどうにかしてあげられない。
「飴が降ったら晴れるものだよ。その時に走ったらどうかな?」
「うぅ……我慢するんだぜ………。」
「偉い偉い」
まるで赤ちゃんみたいだな、とクスクス笑うと天満くんもつられて笑い出した。
少しは元気出たかな。
彼から寂しげな雰囲気が消え去ったとき、レッスン室の扉が開いた。
紫之くんと真白くんだ。
「お帰り、洗濯物どうだった?」
「あはは…またやり直しです。今洗濯機に入れてきました。」
紫之くんが肩を落として言う。真白くんもフォローできないようで、苦笑していた。
「あれ、にーちゃんってまだ帰ってないんですか?」
「うん。……もしかして、延長届け出せないのかも。これ以上雨が強くなって警報が出る前に早く帰れーとかたまに言われちゃうからね。」
そんな話をしたすぐ後に、仁兎先輩は帰ってきた。そして案の定………
「今のうちに帰れってさ」
それに納得できないのか、真白くんが反論する。
「でも、今もすごい雨ですよ?」
「天気予報だと、ここからもっと強くなるらしくてな~。」
その一言が最後だった。校内アルバイトの途中だった紫之くんも、皆帰ることになった。
しかし…………
「あれ、光は?」
真白くんが呟いたとき、私達はレッスン室で叫んだ
「あーーッ!!」
「目を離してしまった……!!!」
「ど、どどどどうしましょう!」
ここが防音でよかった。きっとこの声はどこにも聞こえていないだろう。
「そ、そういえばさっきダッシュ出来ないんだぜ~とか落ち込んでて…」
「まさか…グラウンド走ってたりしないよな!?」
仁兎先輩の問いに、誰も何も言えない。
否定できないのが悲しいところだ。