第40章 愛なんてなかったのだ 三毛縞斑
「あ、あなたは何がしたいんですかぁぁぁぁ!!!!」
意を決して言うと、斑は止まるどころか歩みを早めた。
「………嬉しかった」
「はい?」
「好きって言ってくれて、嬉しかった」
一瞬何の話しか分からなかったが……
そういえば私、言い逃げしたな………
「…………忘れてくれないか…私はもう、君とは」
「謝らせて欲しいんだ、今まで気付けなくて俺は……」
「忘れろ、私は……!」
続きを言うことはできなかった。
急に目の前が暗くなった。
と思えば背中に大きな手が添えられた。
要するに、抱きしめられていた。
「…………斑…?」
「俺も同じだぞお、大好きだ。」
いきなりのことに、思わず彼を振り払おうとしたが全く動かない。
「離せ」
「あんずさん、俺は」
「やめてくれ……………ッ!!」
私はこんなことをしてほしい訳ではない。それにいい加減羞恥心で死にそうだ。
「………私は、ようやく気付いたんだ。今まで知らなかった、これが恋だなんて。それだけで良いんだ。斑、君にこれ以上は望まない。だからやめてくれ。」
しかし彼は離れるどころか更に力を入れてくる。
「俺は片思いだけじゃ嫌だ」
「知るかアンタのことなんて」
「非道いなあ」
肩に顎を乗せて体重を預けてくる。
………クソ重い
「何でだ?俺がママだからか?零さんがいいのか?アイドルとプロデューサーだからか?」
何だか危ない方向に行ってないだろうか
軌道修正しよう。えーっと……?
駄目だどうしたら良い!?
「だから、そういうのはいらない。私は恋してるって分かっただけで満足だ。アンタのことなんて知らない。」
つっけんどんに言い放つが、彼の態度は変わらない。………お互い、ずっと側にいたのに感情をぶつけ合うとこうなってしまうのか。
片思いで満足する私と、片思いだけじゃ満足できない斑。
これじゃいつまでたっても平行線だ。