第40章 愛なんてなかったのだ 三毛縞斑
「ママ」
その呼び方をすると、彼はバッと体を離した。
「私は、ママが好きだよ。大切だよ。頼りにしてる。」
「違うぞお!俺はそんなんじゃ………」
「でもそれ以上に、斑が好き。」
その一言で彼は押し黙った。
「大好きな斑にそんなことを言われると苦しくなる、切なくなる。私は昔から言葉遣いが荒くて、女の子らしくもなくて。恋なんて一生しねえって思ってた。
でも恋をした。斑を好きになった。それだけで良い。それだけで幸せ。満足。
だからいきなりさっきみたいなハグとかはハードルが高い。正直斑の顔を見るだけで緊張してどうにかなりそう。」
一気に気持ちを伝えた。斑の気持ちは分かった。それなら、私の気持ちを。
「………………でも零さんと」
「あれは、アンタのことを思って泣いた。慰めてくれてただけだ。」
少しこっぱずかしいが誤解を解くためだ。致し方ない。
「斑が一番だ。まだ何か納得できない?」
「…………………いや、十分だぞお。悪かった、変なことして……」
「そっかそっか。よかったよかった。」
どうやら誤解は解けた様子。フゥ、とため息をつくと彼はいつも通り笑った。
「帰ろうか」
私も笑って頷いた。
恋なんて不慣れだ。
どうして良いのかも分からない。
それでも今は幸せ。
大好きな斑が隣にいる。
でも。彼は卒業して私と、離れ離れになって。もう二度と会えなくなるかもしれない。
それでもきっと、今こうして彼の隣にいたという真実だけは絶対に変わらないから。
幸せの思い出は消えないから。
それもまた、幸せだから。
おままごとは終わった。次は本当の気持ちを、お互いの気持ちを分かち合おう。
愛なんてなかったのだ。
最初から全部恋だったのだ。
私は斑が、だあいすき。