第40章 愛なんてなかったのだ 三毛縞斑
その次の日に朔間先輩に呼ばれたので、再び軽音部の部室へ向かった。
「どうじゃったかの?…………その顔は、悪い方に転んだか」
「……斑とは二度と話したくない」
ママではなく斑、と呼んだことに彼は驚いていた。
「おままごとも終わったようじゃの。」
「それは感謝してるんだ……。だけどよ、今思えば斑………何か言いかけてた気がして。何だったんだろうな。」
「吾輩が知ってると思うか?」
先輩は意地悪く笑う。
「愛じゃなかった、恋だった。それが分かっただけで満足してるよ。」
「本当かのう?片思いで終わっても良いのか?」
「………いいんじゃね?」
「まるで他人事じゃのう……」
実際、全く実感がないのだ。それに斑と恋仲になるとか…………………
「考えただけで吐き気が止まらない………」
「嫌いなのか好きなのかどっちなのじゃ」
どうしてもママとしての斑が頭の中を埋め尽くす。ママと娘の恋って……………
「誰か私の前からあの人消してくれねーかな………もしくは私を今すぐ消して欲しい……」
「嬢ちゃんや、気をしっかりお持ち。」
さすがの魔王も対応に困り果てている。
……本当に面倒くさい人を好きになったものだ。
「先輩」
「何じゃ?」
「斑は………………………
私を嫌いになっただろうか」
先輩は少し首を捻った。
「嫌いになって欲しくないのか?今日の嬢ちゃんはよく分からん……」
「…………………私にもわからない。でも斑に嫌われたくない。でも私のことを好きとも思って欲しくない。よく分からない。」
「………要するに、今までどおり………おままごとのままが良かったのか」
先輩がそう言うと、私の目からポロポロ涙がこぼれた。
その通りだったから。
先輩は優しく涙を拭う。
「…………今回ばかりは、余計なことをしたかのう……済まなかった………」
先輩が私を抱き寄せてそっと背中をさする。私は彼にしがみついて気の済むまで泣いた。