第5章 Valkyrieでも行き着く先はホッケー
「ニッコリしたいねん計画再始動やでっ!!」
「か、影片くん…?」
放課後にA組にやってきた影片くんは意気揚々と私の腕を引っ張っていく。
「いったいどうするの…?」
「手芸部で一緒に裁縫すんねんっ!本日限定の仮入部や!考えたんやけど、無理に笑うより自然な感じで笑えるようになんのが一番やろ?」
「そりゃ…そうだけど」
「んならのほほんとした和気あいあいな感じがベストやっ!!お師さんから許可はもろてるから安心してや~。」
と引っ張られただ今チクチクとお裁縫中。
「……なんや沈黙が痛いわぁ。なぁなぁ、そろそろ話してくれへんか?」
「何を?」
グイッと顔を近づけてくる影片くん。オッドアイがランランと輝いている。
「えー?ニッコリしたいーとか言い出したきっかけに決まってるやん!一日つきおうてあげたんやから話してくれてもええやろ?」
「ふむ……。僕も興味があるのだよ。騒がしいのはごめんだが、特別に話すことを許可しよう。」
と2人は聞く気満々。困るのは私だ。
「……大したことでもないですよ」
「いい。話すのだ小娘。」
斎宮さんにせかされ私はチクチク縫いながら話し始めた。
「昨日、中学校で仲良かった男の子に会ったんです。その子に笑わないと嫌われるよーって言われたことが、何か頭に残って…。
何か気づいちゃったんですよね。私、その子のこと好きだったんだなぁって。
中学生のとき、私いじめられっ子だったんです。でもだんだん慣れてきて…靴とか隠されても無表情でいられたんです。
でも苦しくなってよく人がいないところで泣いてて…。助けてくれたのがその子だったんです。
でも今思えばラブじゃなくてライクの方だったかなーって。私にとってその子は絵に描いたようなヒーローだった。憧れみたいなのがあったんじゃないですかね。
それを勘違いしてただけかもしれません。」
そこまで話して気づいた。
部室がシーンとなってしまったことを。