第2章 夢の話し 遊木真
「神崎くん!落ち着いて!刀は使わないで!」
お兄ちゃんはその現状に抱きつくのをやめ私を解放した。
「ちょっとちょっと~?物騒なんだけど~」
「全ての元凶はお兄ちゃんだよ…」
兎にも角にも結果的に助けてくれた(?)神崎くんにお礼を言おうとしたら…
「何!?そもそも妹君にそこまで執着するのもどうかと思うが…?」
「ならあんたのユニットにいるあいつはど~なの?そーいうノリってチョ~うざぁい!」
何故か二人の喧嘩が始まった。
「鬼龍殿は今関係ないであろう!」
「あ~面倒くさ~。ていうかさぁ、俺は上級生なんだけどぉ?口の利き方がなってないんじゃない?」
「このような上級生に使う敬語などない!」
「はぁ~?何なのこのクソガキッ!」
まずい。まずいまずいまずいまずいまずい!
エスカレートしてってる!
ていうかまた抜刀しそう……!?
「神崎くんダメだよ!落ち着いて!」
神崎くんの今まさに刀に触ろうとする手を両手で止める。
「ちょっとっ…!?ゆうくんという者がいながら何ちゃっかり手ぇ握っちゃってんの!?好海とはいえ…それ……は…!」
誰のせいだと思っているんだと怒鳴りつけてやろうとしたが…お兄ちゃんの青ざめた顔を見て私は首を傾げた。
「ゆうくん……!」
へ?と私はお兄ちゃんの視線を恐る恐る追った。
「……!!」
まるで信じられないものを見たというような真くん。放送委員のお仕事で教室にはいなかったのだが戻ってきたらしい。
「せ、瀬名殿…!」
私はなるほど、と納得してしまった。神崎くんの顔が真っ赤なので少々ややこしくなったようだ。
「ゆうくん、これは好海がそいつの抜刀を止めようとしただけ!」
「その通りである!誤解しないでいただきたいっ!」
二人の主張も聞かず真くんは走り去って行った。
「………ちょっとぉ!?抜刀時ぐらい考えなよっ!?ゆうくんが…ゆうくんがっ!……好海、追っかけて!」
「え」
「謝罪ならいくらでもするである!今は追いかけなければならぬ!瀬名殿!」
「えええええええーーーーーーっ!?」
二人に背中を押されて私は真くんが去って行った方へ走り出した。
自慢じゃないが、運動音痴は折り紙つきだ。