第38章 俺の奥さんちびっ子さん
「綺麗っすね~!」
街の中心で大きなクリスマスツリーが輝いている。折角だからイルミネーションを見ていこうと言ったのが事の始まり。
「うん綺麗。クリスマスって、何歳になってもテンション上がるよね。」
いつも通り落ち着いているので全くそのように見えないが、それでも鉄虎には分かる。あんずはいつにもましてハイテンションだ。
「あ、そうだ姉御…じゃなくてあんずさん。」
姉御と言った瞬間にギロリと睨まれた。
「プレゼントあげるっす。」
あんずのくくっていた髪を解き、右側の髪にパチッと何かを止める。
「………?」
「やっぱり似合うっす!可愛い!!」
ホラホラ、と鉄虎が鞄からスマホを出して鏡機能であんずの顔を写す。
「…バレッタか。」
「流星隊みたいでしょ?」
五つの星が連なったバレッタがキラキラと輝く。
「ありがとう、大切にする。……でもつけかた下手くそ。」
あんずがせっせとつけ直す。
「……………は、初めてなんすよ…結構頑張ったっす………」
と落ち込む鉄虎をよそに、あんずは高校時代の友人を思い出していた。
(バレッタといえば真緒くんだよね……元気かな。彼もアイドルでよくテレビで見るけれど。
私もプロデューサーになった。でも絶対会えるってわけじゃないし………)
「あんずさん!」
鉄虎が考えモードに入ってた彼女を現実に引き戻す。
「まーた他の人のこと考えてたっすね?今日は俺があんずさんを独り占めするデーっすよ!?」
「……初めて聞いたよそんなこと。ごめんね。何か高校時代のことが思い出されて。仁兎さんと鬼龍さんに、会ったからかな。」
「それじゃ、また皆で集まれば良いっすよ!きっと忙しいだろうけど………俺も会いたいっす!」
少ししんみりしたが、たまにはこんなのも良いだろう。
あんずはそうだね、と呟いた。