第38章 俺の奥さんちびっ子さん
「あぁそうだ」
あんずが思いだしたように鉄虎を見上げる。
「私、君にクリスマスプレゼント用意してた。」
「………へ?」
「喜んでくれる…………と思う。とびっきりのプレゼント、だから。」
あんずは少し照れくさそうだ。
鉄虎はワクワクして思わずあんずと目を合わせるために屈んだ。
「何すか!?俺、あんずさんのプレゼントなら何でも嬉しいっす!!」
あんずはそんな鉄虎の手をポン、と自分のお腹に置いた。
キョトンとしている彼に一言。
「鉄虎くん、お父さんになりました。」
「…………………」
鉄虎はキョトンとしたあと、思わず屈むのをやめた。
「ほ、ホントっすか!?!?」
「まだ三ヶ月だから、産まれてくるのはずっと先だけど。この間病院行ったの。どうせ言うなら今日かなって。」
鉄虎は感極まって、あんずを抱き上げてグルグルまわした。
「ちょ、鉄虎くん」
「やったやったやった!!!あんずさん大好きっす!最高のプレゼントっすよ~!!!!」
さすがに周りの人がギョッとしてこちらを見ている。
「お父さんっすよ俺がお父さん!!」
あんずを下ろしてもなお喜びが止まらないようで嬉しそうにピョンピョン跳びはねている。
周りの人も会話を聞いて察したのか、変な目で見ることはなかった。
「君はアイドルだから、若干不安だったけど杞憂か。」
「へ?何が不安なんすか?」
「妻子持ちでイメージダウンしない?」
「そんなの気にしないっすよ!!あ~、男の子かな、女の子かな~!名前はどうするっすか!?」
気が早い鉄虎にあんずは苦笑する。
「は、でもこれじゃ俺のプレゼントのインパクト薄いっすよね!?」
「………そんなことないんじゃない、私………………
嬉しいよ」
あんずの笑顔に鉄虎は安心した。
これからは大切な家族が一人増える。頑張っていかねば、と鉄虎は気合いを入れた。
(隊長、深海さん、翠くん、忍くん、大将、皆……………またどこかで絶対会おう!その時までに俺は、男の中の男になって、子供とあんずさんを守っていくっす!!!)
雪が降るクリスマスの空に、鉄虎はそう誓った。