第38章 俺の奥さんちびっ子さん
「さ、クリスマスはまだまだっすよ!鉄虎サンタが何でも買ってあげるっす!何が良いっすか?」
鉄虎はそう聞いたものの、あんずはケロッとして答えた
「洗濯洗剤かな………もうないんだよね」
「いやいや姉御……あんずさん!クリスマスっすよ!?クリスマス!!他にはないんすか!?」
「…………………クリスマスねえ……」
うーん、とあんずは3秒ほど考えていたが、何もないようだ。
「洗濯洗剤」
「まじ一択っすね……!?うーみゅ、じゃあ俺が何かプレゼントするっす!そしたら喜んでくれるっすか?」
鉄虎がパン!と手を合わせて言うと、あんずは少しだけ微笑んだ。
「うん、嬉しいな。」
「よーし!じゃあ早速………」
一歩踏み出したが、あんずが喜んでくれそうなものが思い浮かばない。そもそもどこの店に行けば良いのかわからない。
「………鉄虎くん?」
「あ、姉御………すみません!店だけでも選んでほしいっす!!」
「………………選ぶ、選ぶから。頭を下げないで……あと何度も言うけど姉御はやめて。」
すると鉄虎は更に頭を下げる。人が多いからチラチラと見られるので、本当にやめて欲しい。
「あのお店は?」
あんずが指さしたのは今時女子のファンシーな店。鉄虎が入るには少し勇気がいるが、あんずのためだ。
「………でも若い子ばっかり」
「あんずさんは若く見られるんじゃないっすか?」
「あら…」
「身長的に!」
次の瞬間、あんずの深海奏汰直伝のチョップが鉄虎の頭上……に届かず、鳩尾に直撃した。
しかし全く痛くない。
その非力さを可愛い、と思っている間にあんずは先に店に入ってしまった。
「あ、あんずさん…怒らないで欲しいっす……!」
「鉄虎くんにはわからないのよ。高いところに手が届かないから必死に背伸びしてあと少しで届く……本当だよ、本当にあと少しって時に『とってあげます』とか言ってとられちゃう私の気持ちなんて」
とかなんとかブツブツ言い出し、やはり怒っているようで鉄虎は困り果てた。