第37章 シスコンも大概に 春川宙
「ごめんなさい…」
「宙くん?」
「……宙が、あんなこと聞いたから…」
シュンと落ち込む彼に、かける言葉が見つからない。
だが、私は決意をした。
(ううん、大丈夫。大丈夫だよ。私も強くならなきゃ…。)
心の中でそう告げる。宙くんがギュッと手を握ってきた。心配そうに顔を覗き込んでいる。どうやら、彼には私の心の中の不安やら何やらが全部見えているらしい。
「…………あのね宙くん、私………」
「あんず」
いつの間にか皇帝陛下が病院の先生を連れて戻ってきていた。
そのまま軽く診察をされ、異常なしとわかったが今日は様子を見て入院らしい。
「…まさか私が入院するなんて……そんなに悪いのでしょうか」
「さあね。それより……………
そろそろ離れてくれないかい?」
皇帝陛下はニッコリ笑って宙くんの手を引き離す。
「兄様ったら…。あ、そうだ。私、あのこと宙くんに話そうと思うのです。良いですよね?」
その瞬間、皇帝陛下の顔から笑顔が消えた。
やっぱり………駄目?
「………宙は」
少し緊迫した雰囲気の中、宙くんが話しだした。
「宙は、たくさんの色が見えます。あんずが喜んでるとき、怒ってるとき……喜びの色、怒りの色が見えます。でも……いつでも、あんずには悲しみの色が見えます。
宙は知りたいです、あんずの悲しみの色がどうして見えるのか。知ったところで何が出来るのかわからないけど宙は………宙は、あんずのことが大好きだから!」
やはり、彼には全て筒抜けだ。
私は勇気を出して皇帝陛下に向き直った。
「兄様、私強くなりたいんです。兄様…………ううん、
皇帝陛下に守られ続けるのはもうやめたいから。」
「……………わかった」
皇帝陛下は、笑顔を取り戻した。優しく微笑み、私を見つめる。
「ただし、駄目だと思ったらすぐに止めるからね。」
「はい!」
宙くんが再び手を握ってくれる。
今度は皇帝陛下は手を引き離さなかった。