第37章 シスコンも大概に 春川宙
「あんず~!」
「わっ」
驚きのあまり、教科書を落とした。ホームルームから音楽室への移動途中に、宙くんに後ろから抱きつかれた。
「シショー、こんにちは!人に会ったら挨拶します!!」
「うン、こんにちハ」
宙くんに応えながらも、教科書を拾ってくれた。
「ありがとう!拾ってくれたら感謝します!」
「感謝感謝な~!」
「本当に仲良いネ」
棒読みで夏目くんが微笑む。
それに少しムッとしたが、すぐに気持ちを落ち着かせた。
「フウッ!危ない危ない!そういう感情は皇帝陛下にだけ向けるって誓いを破るとこだったよ!!」
「随分な誓いだネ…」
「だからあんずはいつも怒った色が出ないんだな~!いっつも喜びの色な!宙といるときが一番綺麗な色です!う~れし~な~!!」
あぁぁだめだ可愛い宙くん可愛い
私、君の彼女で良かったと心の底から思えるよ!!
「……子猫ちゃん行くよ」
突然夏目くんが私の手を引っ張った
「わ、皇帝陛下……」
彼も移動教室だったらしい。近くを歩いている。
「宙も行きますね!」
彼は一目散に走って行った。………さすがパルクールできる子。身軽。ホイホイ屋根の上渡ってるのは気のせいじゃないよね!?
「………見られたかな」
「もしかしテ、宙が彼氏っテ………」
「言ってません……」
「それはまずいネ」
夏目くんが珍しく冷や汗を流す。
というか、ここまで私の問題に付き合ってくれるとは。
良い友達を持ったなぁ、と1人感動していたのだった。
「感動してる場合じゃないでショ、どうするノ」
「………何とかするよ、腐っても私の…
わ、……っ……駄目だよ言えないよあいつと血が繋がってるなんて思いたくないよ橋の下に捨てられたかったよ……!!」
「子猫ちゃん無理しないデ………」
どうどうと夏目くんが慰めてくれる。
…………それを見られてることに、全く気付かなかったのだけれど。