第37章 シスコンも大概に 春川宙
「…………それデ、家出したんダ」
「うん!」
次の日、学院で隣の席の夏目くんに全てを説明した。皇帝陛下が嫌いという共通点があるので、すこぶる仲良し。
「どこに泊まってるノ?」
「そこらへんのホテルだよ。お金ならあるから。」
夏目くんが苦笑する。(本当は嘲笑ってただけらしいけど気付かなかった)
「子猫ちゃン、そんなに宙と夏祭り行きたいんダ?」
「もっちろんだよ~!あんな息の詰まる家なんかいたくないしね!皇帝陛下が何かとうるさいし、あの女と男はそれ以上だし。」
あの女と男とは両親のこと。…………産まれてこの方、お母様とかお父様とか呼んだことがない。
出来損ないの私に興味がないのか、大して話しかけてこないし。
「一つ予言をしようカ」
「何?また占い?」
夏目くんはニッコリ笑った。
「子猫ちゃんは近いうちに優しい嘘の真実に気付くよ」
「…………ヤサシイウソノシンジツ?呪文?」
全く単語変換できなかった。夏目くんはこれまた苦笑(これまた嘲笑なのだが)
「それにしても、あの皇帝陛下動きが速くてね。私のホテル全部当ててきては私を捕まえようと使用人送りつけてくるの。
私、専属の使用人なんて持ってないから自分で逃げ切るか賄賂を渡すしか方法がなくてね?」
「……あえて賄賂には突っ込まないヨ。それなら、零兄さんみたいに学院で寝泊まりしたらどうかナ?」
夏目くんの提案に、私は乗った。
天祥院家の人間ということで、すんなりOKされた。……何だか癪だ。
とりあえず、夜になってから夏目くんに電話した。
「………でも、学院ってすぐばれるよね……?」
『零兄さんの棺桶で寝たラ?』
「寝ません!それに、何かちゃんとしたお部屋かしてもらっちゃったし。」
『学院が一番安全だと思うヨ。いつでも捕まえられるからってことで相手も油断するんじゃないかナ』
なるほど。
夏目くんの発想に舌を巻き、私は家から持ってきた寝袋(よく家出するので買った)で寝た。