第37章 シスコンも大概に 春川宙
財閥のお嬢様としてはかなりおてんばな私は、天祥院家では異端児扱いだった。
そんな私の監視役が兄様。小さい頃からずっとずっと。
だから兄様が苦手。逆らえないから。私にとって絶対的な人だから。
あの忌々しい皇帝陛下め
そう、何と心の中で唱えたことか!
今回こそ、今回こそ。かの皇帝陛下に打ち勝って宙くんと夏祭りに行ってみせる!!!
「兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
大して人もいないのに無駄に広い屋敷を駆け抜ける。
なぜ隣の部屋がこんなに遠いのか。何で家がこんなにデカいのか。全くもって理解できない。
「………あんず、いつも言ってるけどおしとやかに…」
と言われるのを覚悟で兄様の部屋の扉をめちゃくちゃ勢いよく開けた。
「お話しがありますッ!!」
「もう少しおしとやかに出来ないのかい?」
あ、ちょっと違った。
「兄様、どうしても夏祭りに行きたいのです!」
「駄目だよ」
「お願いお願いお願ーーーーい!!!行きたい行きたい行ーきーたーいーーーッ!!!!」
地団駄踏んで抗議するが兄様の目は相変わらず冷たい。
「駄目」
「…………こうなったら、最終手段です」
私はキッと兄様を見つめ返した。
一瞬、目が合う。
「あんずは家出しますッ!!!」