第36章 恋愛は積極的に 高峯翠
「あ、ぁぁぁあんず殿!?」
私を見るなり仙石くんがどうしたんでござるかぁぁぁ!と飛んできた。
「何?」
「ほ、ほほほほほほ包帯が増えてるでござるよ!?」
「あぁ………これね」
あんずは包帯でグルグルまきの両手をブラブラ振った。昨日の写真立て事件で、結局病院に行って何針か塗ってもらったのだ。
親にすこぶる怒られた。
「……………もうあんなことしないよ。大丈夫だよ、仙石くん。」
「……あんなこと?」
「ガラス割っちゃって。」
ひええええええええ!と仙石くんがオーバーに驚く。まぁ、割ったのはガラス製の写真立てだが。
でもまぁ一つスッキリしたことは、幾分か気分が腫れたのと、千秋くんとの写真が私の血で駄目になったので捨てることになったことだ。
少しは女々しさから卒業できるだろう。
「と、いうわけでしばらく裁縫どころか体育もその他もろもろ色々出来なくなったよ。」
「それは翠くんも心配するでござろうな……。何てったって、彼氏であるからして!」
仙石くんが朗らかに言ってのける。それを聞いたとき、何だか暖かい気持ちになった。
「いやー、それもそうだね~!ホレ、今ハイタッチ出来ないので!!肘タッチ~!!」
「肘タッチでござる~!!」
しかし思いの外これ骨に響く。お互い涙目になって、そこで別れた。
「………って別れちゃ駄目じゃん!」
今日は流星隊のプロデュースの日なのにッ……!
あぁバカバカ私の大ばか者!
「ワプッ」
廊下を走っていたら、誰かとぶつかった。
当然のごとく私が吹き飛ばされる。
「………あんずさん?」
まさかの翠くんだった。
「…どうしたんすか、それ。」
彼は両手のことを言ってるらしい。
私は笑って答えた。
「女々しさ卒業記念だよ!」