第36章 恋愛は積極的に 高峯翠
「………」
正直、自分がここまで女々しいとは思わなかった。……まぁ女だけど。
相変わらず部屋の隅っこには千秋くんとの写真が飾られている。
翠くんとの写真は正面に堂々だけど。
「…………別れてスッキリしたからって、普通また好きになる?」
私には翠くんがいるのに。
きっともうバレてるんだろうな。さっきあんなこと言ってたし。
「……………私………
本当に翠くんが好き…………?」
改めて声に出すと、全く実感が湧かない。私の作ったマスコットキャラクターとかを見て目を輝かせる彼。いつも反射的に言う、『結婚してください』
これに良いよ、と返事したら交際がスタート。
………最初は、確かに大好きだった。いや、それは今も………………今も?
「今も好き?本当に?………………私は翠くんが好き……?…………翠くんは、私が好き…………?」
…きっと嫌いだ。こんな私なんて。
「じゃあ、千秋くんが好き………?でも、千秋くんはもう私のことなんて………」
あぁ、何だか分かんなくなってきた。
イライラして、どうしようもなくて。
不思議に一定の距離を開ける私と千秋くんが、満面の笑みで写真に写っている。こんな時も、千秋くんは私には近づこうとしなかった。
その写真が入った写真立てに手を伸ばし、思いっきり壁に叩きつけた。
ガラス製の物だったので、すぐに砕け散った。
音を聞き付けた家族が階段をのぼってくる音がする。
それさえもどうでも良かった。
「………………どうしたら、良い…………?」
ギュッと手を握ると、ガラスの破片が刺さったらしい。血がにじみ出た。
私の問いに誰も答えるはずもない。
慌ただしい家族の足音が、すぐそこまで来ていた。