第36章 恋愛は積極的に 高峯翠
「戻ったぞ~!」
「………むす」
スポーツドリンクを持った千秋くんが、逆の手で深海さんを引きずっている。
「あ、あれ?深海さん?」
南雲くんが真っ先に反応する。
しかしまぁ答えは見えている。
「うむ、噴水で見つけたので引きずってきた!!」
ほら、こんなことだろうと思った。
「千秋くんって大胆不敵すぎるよね……ほら、濡れてる深海さん引きずって廊下ビショビショ!」
「う、すまん!」
取りあえず流星隊の皆で廊下掃除。
翠くんの顔に鬱館が蘇ってきた。
「……あの」
また死にたいだの何だの言うのかと思えば
「隊長とあんずさんってどんな関係なんすか」
「ちょ、翠く……」
「元カレ元カノだが?」
…………………全てが崩れる音がした。
凍った雰囲気をぶちこわしたのは、怒り狂った私だった。
「…………何ッで言っちゃうかな…!!!」
「は!?あ、あんず!すまん!!頼むからハリセンはしまってくれ!!!」
「問答無用ッ!!!」
しかし意外と逃げ足が速い。追いかけながら必死で説明した。
「誤解ッしないでっ、欲しいんだけどねっ!何とも思ってないからッ!お互い未練ないからっ!何にも後に引いてないからっ!!
別に変な意味で黙ってたのでハッ!なくっ!!単……純に!現カレに元カレの話ってしたく、ないじゃない!ないじゃない!?」
「流石、だなあんず!説明しながらっ!俺への!ハリセン攻撃は!止むことを、知らないな!!」
「よけ、………るなッ!!!」
必死で振り回すものの当たらない。あぁくそ、逃げスキルあげやがって……
「はい、すと~っぷ」
走り回っていた私達に深海さんの手刀がおちた。
「はやくれっすんしましょうね?」
「………はい/おう」
何だかんだでこの人が一番怖いのだ。