第36章 恋愛は積極的に 高峯翠
「………何してんすか」
「フッ、何やってんだろうなぁ、俺……」
「いや変に格好つけてごまかそうとしないでください。裁縫とかはやめとくよう、言われましたよね?」
ジトッとする目で見てくる翠くん。見つめられる私は右腕の肘から甲にかけて包帯(中には湿布がベタベタと貼ってある)を巻いている。
筋をやってしまったらしくまだしばらく取れない。
「大丈夫大丈夫!痛くないから!」
「……そんな痛々しく包帯巻いといてよく言いますね…」
「違うよ、これは…………ほら、千秋くんみたいな」
「あれはテーピングっすよ。……ていうか、いい加減守沢先輩とあんず先輩の関係を教えてください。彼氏である俺からしたらとても気になるし、段々学院でも触れちゃいけない禁句の話題みたいになってますよ。」
…………最近、翠くんはこればかり。基本年上にはさん付けで敬語の私がかの隊長を千秋くんと呼ぶのがどうも不思議でたまらないらしい。
「………いやあ、それはそれは………壮大なストーリーだよ!このまま話したら50年はかかる……かな?」
「いや、17年と18年しか生きてない人達の話で何で50年かかるんですか」
「それを語るのに90年かかるよッ!!」
「………もう良いです」
「はい私の勝ち。そして完成~!」
話に終止符が打たれたので、バサッと完成品を広げる。
「うわぁぁぁぁぁッ!!!」
翠くんの目がキラキラと輝く
「オリジナルマスコット『パプリン』のパーカー!」
パプリカの妖精パプリン…パプリカに手と足はやして顔つけただけだけど!とっても可愛いんだなこれがっ!
「欲しい!欲しいです!」
ハイハイハイハイ!と挙手して身を乗り出す翠くん。まぁ彼のために作ったのだから大人しく渡す。
「わあぁありがとうございますもう結婚してください!!」
「…………翠くん、落ち着いた方がいいでござるよ…」
「…そしてレッスンの休憩中に俺達を差し置いていちゃつかないで欲しいっす………」
そう。実はレッスンの休憩中だったのだ。ちょっとはしゃぎただろうか。
深海さんは当然のごとくいないし、千秋くんは飲み物を買いに行っている。
まぁ、年上の人がいないしね。気楽なもんだよ。
でもあの2人は年上の人って感じがしないんだけど、ね。