第35章 神様に懐かれているのです!! 姫宮桃李
「…………これは…やばいのです」
あんずは夜の校舎に、ただならぬ気配を感じていた。
それを説明するも、誰も聞かない。
「折角企画したんだから、ね!?」
ひなたに強く言われて引き下がってしまった。
その後引いたくじにより、順番は決まった。
一番に葵兄弟、2番目に紫之と真白、三番目にあんずと桃李だ。
「急遽立案したからね。メンバーはこれだけ。」
「…………俺もう帰りたい」
「何言ってるのゆうたくん!」
嫌がる弟の背中を押してグイグイ歩いていく。しかし、クルッと振り向いて
「何か今やばいっていう生徒会室に入って記念撮影して帰ってきてね!わかった?」
とだけ言い残した。
「生徒会室ですか………それに記念撮影って…」
「だだ、大丈夫だって創!幽霊なんて、迷信だから!ですよね?あんずさん!」
「え、あ、はい!そうなのです!」
これだけハッキリ見えておきながら何を言うのか。あんずは自分が悲しくなった。
(……神様いないのです。用事…長いのです)
そして底知れない不安と焦りを抱え、桃李と生徒会室に向かった。
生徒会室に到着した二人は安堵する。杞憂だったのか、何もなかった。
「えっと……記念撮影か。ハイ、入って入って~!」
桃李がスマホで自撮りする。あんずも引きつった笑みを浮かべつつも写った。
「どんなのが撮れたのです?」
「んーとねー」
先ほど撮った写真をみた途端、二人は戦慄した。
「…………な、何か………写ってる……のです…?」
「そ、そんな馬鹿なことある…わ…け…」
恐る恐る後ろを振り向く。
そこにいたのはこの世のものとは思えぬ髪の長い女だった。
「う、うわぁぁぁぁぁッ!!!!」
「姫くん、心を強く持つのです!憑かれてしまいますのです!」
あんずが取り乱す彼をなだめる。桃李は覚悟を決め、あんずを庇うように一歩前に出た。
「やいっ!どっか行けッ!!あんずに何かしたら許さないから!!」
「……ッ姫くん!!近づいたら駄目なのです!!!」
霊は桃李を見るやいなや鬼の形相になり、その途端に生徒会室の物が飛び交った。
「な、何これ何これぇ!?」
突然のポルターガイストに、二人は慌てふためいた。どうやら怒らせてしまったようだ。