第35章 神様に懐かれているのです!! 姫宮桃李
「………じゃあ、あんずが棺桶運んでたのは…」
「神様に後ろから押してもらってたのです!」
「やけに仕事が早いのは」
「神様が手伝ってくれてたのです!」
彼はポカンとしていた。しかし、確かに私を信じてくれたようです。
「………ていうか、本当にずっと一緒にいるの?」
「いや、さすがに……お風呂とか…わきまえるときはわきまえますよ。君が見ていないものは、見ていませんし………」
「あんず、大丈夫!?何もされてない!?」
「?」
「し、失礼な。」
私一応神なんですけどね。
………まぁ、神なんてたてまえで。
忘れ去られた今ではたいした力もありませんが。
「でも何で一緒にいるわけ?」
「………離れてみましょうか?」
「うーん……ちょっとぐらいなら、大丈夫だと思うのです!」
私はスーッと二人から離れた。5メートルほど離れたところで、それは起きた。
「うにゃぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「わ、早速来たのですッ!!」
普段は私にビビってでてこない悪霊がワラワラと群がってきた。
こうなることは分かっていたので、さっさと戻ろうとしたのですが……
「あぁああっち行け!あんずは僕が守るんだから!!シッシ!!」
「ひ、姫くん………!」
「あっち行け!ガルルルル!!!」
目にこぼれんばかりの涙を溜めて、必死に威嚇する。
そんな彼を見て、悪霊たちがギョッとした顔をして逃げていった。
「…………あれ?神様いなくても消えたのです…?」
「ぅ、うう……怖かったよぉ~!!!!」
さっきまでの威勢は何だったのか、彼は泣き崩れた。
そんな彼をなだめながら、どういうこと?とあんずちゃんが視線で聞いてくる。
「………確か、彼はお金持ちでしたね?」
「そうなのです。御曹司なのです。」
「悪霊たちはお金が嫌いなんです。何か、お札と小銭が御札とか数珠とかに見えるみたいで。」
「ふぇ?そうなの?」
涙を拭いながら、彼がキョトンとする。
私はしかと頷いた。
まあ嘘ですけど、気休めにはなるでしょう。
ただ隠れていた私の存在に気づいたからだろうし。