第34章 侍系女子と女子力高い男子 鳴上嵐
「すみません、サインを!」
「握手してくださーい!!」
「……私はアイドルではないのだぞ。」
なぜか色紙を持って律儀に列を作る摩訶不思議集団。
「お帰り願おう。今は学院内だ。試合の応援は感謝するが、これはハッキリ言って迷惑だ!」
ズバッと言うと、集団から大ブーイングがあがる。
「そんなこと言わずにお願いしますよ!」
「くどいッ!!……何をする!?」
とうとう腕にしがみついてきた。……試合の応援は本当に嬉しかったのだが、やむを得ない。
私は木刀を握る力を強めた。
その時
パシィィィィン…………
「なっ………何で君がここに」
私を掴んでいた手を思いっきりはたいて、私をかばうように立っているのは
鳴上だった。
「何でって、好きな女の子のピンチに駆けつけない訳にはいかないでしょう?」
鳴上は綺麗にウインクする。
しかし、
「このオカマ野郎ッ!!!」
私と全く同じ木刀を持っていたのが幸いしたらしい。出鱈目に振って、鳴上に突進してきた。
「鳴上伏せッ!!」
だがそれは私とて同じこと。幼い頃から剣道をしている私に、それは赤子の手を捻るより簡単だった。
伏せた鳴上越しにソイツの手を叩き、木刀を落とす。
そして腹をついた。
「ウッ……!」
「ここから出て行け!!鳴上に手を出してみろ、即座に叩き斬るッ!!!!」
私の威勢に震え上がったソイツらは、悲鳴を上げて去って行った。
伏せていた鳴上がスッと立ち上がり、私に近寄る。
「怪我は!?」
「……は?」
「怪我はない!?」
「ないが……」
すると、彼はホッとしたのか微笑んだ。
「良かった………。それにしても、あんずちゃんに守られるなんて情けないわね…かっこ悪いわあ」
「………そんなことなかったぞ。」
自嘲気味に笑う彼に、私も微笑んだ。
だって、腕を掴まれたときにちゃんと助けてくれた。
「格好良かったよ」
そう言うと、鳴上はフフッと笑った。