第33章 嫉妬大作戦 葵ゆうた
強師が二年の冬。
クラスメイトの盗難事件が相次いでいた。
財布、ベルト、香水………
色んな物が盗まれていた。
強師は物騒だなぁ、程度のことにしか思ってなかったし被害に遭ったクラスメイトとはあまりしゃべったこともないので大事とは考えていなかった。
「強師がやったんじゃねーの?」
クラスメイトが、ポツリと呟いた。
それには少し動揺した。なぜ自分なのかと。
「だって、お前以外盗みそうな奴いないし」
何て理由だ。証拠も何もなかった。それなのにお前だろ、と決めつけられた。
そこからははやかった。その話は広がり、教師にも伝わった。
強師はやってないと言い張ったが、信じてもらえなかった。
確かに、口も悪いし成績もあまり良くないが……素行は悪くない。他人を殴ったこともないし、もちろん盗みもしたことない。
それなのに。
強師は休学処分になった。
所属していたユニットから脱退させられた。
最初は思った。何でだって。
でもだんだんどうでも良くなっていった。
本物の犯人が見付かって、手のひらを返したように学院の人間が謝りに来てもその誰とも会わなかった。
「どうでも良いから、帰ってくれ」
強師はインターホンごしにそれだけ言って追い返した。
休学処分はなかったことになったが、学院には行かなかった。
いや、行けなかった。
もう何もかもどうでも良くなっていたのだから。
「てことだな……………!?」
強師は話し終えて驚愕した。
あんずが泣いていたからだ。
「そ、そんなの…………ひどいよ……ッ!」
「いや泣くなよ、泣き止めよ!!」
いつも通り怒鳴るが、別に殴ったりしない。あんずは兄の優しさをちゃんと知っていた。だからこそ、泣いてしまった。
しかしそれが予想外の出来事を巻き起こす。