第33章 嫉妬大作戦 葵ゆうた
「………何で妹のデートに同席…」
「ほらきょーちゃん!元気出してっ…………ギャーーーーーーッ!!」
「ああもううるせえっ!!!」
強師とともに戻ってきたあんずを見て、ゆうたの顔は暗くなっていた。
あんずと話さないから、自然的に彼は友子とひなたと話すことになっていたのだが…
あんずもあんずでモヤモヤしていた。
(友子ちゃんと距離近いッ………)
そんな険悪な雰囲気に気付いてないのかひなたが提案したのは
「お化け屋敷に行こう!」
ぶっちゃけ、あんずはお化け屋敷が大の苦手。
なので断ったのだが、友子はホラーとか大好きなようでごり押しで決まってしまった。
そして更に友子が提案したのは
「ペアを入れ替えましょう!私、ゆうたくんともっとお話ししたいです!」
だとしたらひなたとあんずで行くことになるが……
「ごめん!ジェットコースターすいてるし乗ってくる!!」
と彼はあんずが文句を言う暇もなく走り去っていった。
なので、あんずは強師とお化け屋敷に入り、冒頭に至る。
「何でそんなに平気なの……」
「は?お化け屋敷ってだけでメイクと雰囲気なくしたら『ただ人がいきなり飛び出してくるだけのアトラクション』だろ?」
「発想の転換すぎるよっ!!」
強師にしがみついて生まれたての小鹿のように歩いていたあんずだったが、ちょっと休憩したいと(本当は怖くて動けなかった)言い立ち止まった。
「………あ、そういえば」
「あ?」
「何できょーちゃんって不登校になったの?」
「………………あぁ、それね」
あんずは拍子抜けした。
何か途轍もないことがあったのかと思ったが、兄の態度はそれと違う。
いつもと変わらぬ様子で、強師は語り出した。