第33章 嫉妬大作戦 葵ゆうた
内心穏やかではない。咄嗟に先生に呼ばれたなんて嘘をついてしまった。
(………あの強師さん、あんずさんと幼なじみ…なのかな。それにしては随分と仲が良いし………何でだろう、凄く嫌な気持ち……)
ゆうたは意味もなく噴水にやって来て、何となくそこに座り込んだ。
水が綺麗だ。
「ゆうたくん」
そこへあんずが嬉しそうに駆けてくる。
「ひなたくんもきょーちゃんもいなくなっちゃったの。どうしようかとブラブラしてたらゆうたくん見つけちゃった。」
肩を弾ませて笑うあんず。
「きょーちゃんね、きょーちゃんって呼んだら怒るんだ……。でも強師くんって呼んでも怒るの。ホント、理不尽。何て呼んだら良いんだろうね。」
強師自身は普通に兄さんとか呼んでくれたらそれでいいと思っているのだがあんずには全く伝わっていない。
ゆうたはそんなあんずの話す姿を見て、全く笑えなかった。
(………そんなの、俺が知るもんか)
そんな彼の心などつゆ知らず、あんずは話し続ける。
「小さい頃はきょーちゃんって呼んでねって言ってきたんだよ自分から。私のことなんてあんちゃんって呼んでくれて……なのにあんな可愛げのないのに育っちゃってっ!!」
笑い飛ばすあんずに、ついにゆうたはキレた。バッと体上がり、あんずに怒鳴った。
「そんなこと俺に話さないでくださいッ!!迷惑です!!!」
「ぁ……………」
あんずの顔から血の気がひいていく。口を動かして何か話そうとしているが、声になっていない。
「……………ご、ごめん………ごめんなさい………」
ようやく出てきた言葉はそれだけ。ゆうたはそんな彼女に踵を返し、走り去った。
もうすぐ午後の授業が始まる。
別に逃げてるんじゃない。授業に遅刻したくない、それだけだ
そう自分に言い聞かせてひたすら走った。