第32章 大変なことになりました 伏見弓弦
「じゃあ!一緒に枕投げに!」
「……でも儂、きっと誰かの顔面にぶち当てても罪悪感なかばい……謝罪もできん。」
「関係ないですよ!!あ、でもぶち当てるなら私の顔面にしてくださいね!さすがにアイドルは駄目ですよ!首から下ならセーフティー!首から下なら衣装で隠れ____」
「顔面はそもそも顔面セーフだよ~」
ガラガラッと押し入れが開けられる。
この間延びした声は、凛月くん…!?
「何か声すると思ったらさ………何、逢い引き?手なんか握り合っちゃって…」
「くあぁっ!!久々の光で目がッ!目がぁぁ!ま、まずい!!このままじゃ私の中に眠る悪魔カルボナーラが目覚めてしまうッ!!」
「まずいから中二病で乗り切ろうとするの見え見えだよ。それにその悪魔完璧にスパゲッティだよね。何?この世のスパゲッティ全部カルボナーラに変える悪魔なの?
ソイツ目覚めたらペペロンチーノもミートソーススパゲッティも全部カルボナーラになるの?」
ハッ!何て迷惑な悪魔だ!!
「じゃ、じゃあ悪魔…」
「じゃあって大喜利じゃないんだよこれ。」
はい取りあえず出て来て~と押し入れから引っ張り出される。
真冬さんも当然。
「あ、ん、ず、さ、ん?」
「……ハッ、悪魔カルボナーラが私を呼んでる、行かなきゃっ!」
「では今度からあんずさんが食堂で注文したスパゲッティは全部ホワイトソースがかかることになりますね。」
ニッコリ笑ってガッシリ私の手を掴む弓弦くんは、この上ないくらいの黒い笑みを貼り付けていた。
「何をなさっているのですか?」
「いや、悪魔カルボナーラがここに来いって」
「そろそろカルボナーラのネタはやめません?」
大変なことになりました。
やばいよこれ。
え、ごめん。
悪魔ペペロンチーノが良かった!?カルボナーラ嫌いだった!?
「ま、待って、悪魔ゴルゴンゾーラ入りホワイトソースパスタにするから待って!」
「名前が長いですし待ちません」
弓弦くんが枕を持ち、綺麗に振りかぶった。
南無三!と手を遭わせた瞬間、私の顔面に枕がぶち当たった。