第32章 大変なことになりました 伏見弓弦
「………」
目を覚ますと布団の上で、自分の部屋だった。
あれ、そういえば真冬さんが運ぶとか言ってたような……?
「バーカ」
ふと声がしてそちらを見ると、部屋から出て行く真冬さんが見えた。
「こげんことしとるけん、とられったいね」
「………何が言いたいのですか」
真冬さんだけかと思えば、ドアの所に弓弦くんもいるらしい。
……何だかにらみ合ってて怖い。
「大事なもんは鎖で繋ぐもんばい。野放しにしとんけんがこげんことになるさね。まぁ何もしとらんけんが。」
「……………」
「儂は乱せば満足やっけん。
主らがどうなろうが関係なかもん!」
ケラケラ笑って真冬さんは出て行く。
いったい何の会話だったんだ……?
「……起きていらっしゃいましたか」
弓弦くんは目をぱっちり開けた私を見て、ため息をついた。
「何のお話だったの?」
「……………正直、あのお方は苦手です。」
弓弦くんはどこか暗い顔をしている。い、いったい何が………
「………もう二度と、あのお方の前では眠らないでください」
「え、いったい何が」
私がギョッとしていると、弓弦くんは懐からスマホを取り出した。
「真冬様から送られて来たのですが」
……………………もう、削除したい。
それは真冬さんが寝ぼけて幼児退行していた私を動画で撮った物だったのだ。
『やーだここにいてー!どこにも行かないで~!』
『ブハッ!昼間と態度ば違いすぎたいね!!こりゃお宝映像ばい!!』
『一緒にねんねするの~!!』
『おーよかよか、寝るまでここにいてやるばい!!』
………………最後は、真冬さんの膝に頭をのせて眠りこける私が映っていた。
「…………真冬さん、止めてくれたら良いのにっ…」
「……あんずさん、お気を落とさずに。」
弓弦くんが優しく背中をさすってくれた。それに甘えて、ギュッと抱きつく。