第32章 大変なことになりました 伏見弓弦
温泉からあがり、晩御飯まで時間があるので私は部屋でゴロゴロしていた。
あぁ、ここに住む。永住する。
そんなことを思っていたら部屋のドアがノックされた。
誰だろう、とのぞき穴を見るとそこにいたのは弓弦くん。
…………しかも、浴衣姿。
え、レアじゃね。写メ撮らせて欲しい!
「弓弦くん!写メッ………!」
扉を開けて………お願いする前に、大変なことになった。
彼は私に有無を言わせずそのまま部屋に入り扉を閉め、壁に私を叩きつけた。
「…………怒ってる?」
いわゆる壁ドンをしてくる彼を見上げて、取りあえずそう尋ねた。そして両手をソーッと上げる。
抵抗しませんよ~、武器持ってませんよ~アピールだ。
「えぇ、とても」
「わぁそりゃビックリ。そしてこの現状にビックリ。驚き桃の木」
「山椒の木でございます」
わぁノリ良いね!とグーサインをすると更に怒らせたようで上げていた両手を掴まれ壁に抑えられる。
「うん、まずご説明願おうかな!?なぜ私は今壁ドンされてるの?ん?」
「分かりませんか?」
私は首を傾げた。動かせるのは首ぐらいだからだ。
「浮気者には理解出来ないのですね」
傾げた首が固まった。
ん?これドウイウコト?
「真冬様から見せていただいた写真……やけに距離が近いツーショットが多かったようですが……」
「いやいや気のせい気のせい!安心して!?今日最も男子と近づいたのは今だから!これ以上近づいてないから!!」
「嘘ですね」
………………まさか
「あの写真見た?」
「あの写真とはどの写真にございますか?」
ニッコリ黒笑いを浮かべる弓弦くん。
…………これ騙された!?
「…いやー、果てしない勘違い…かな?」
「序盤にはしゃぎすぎて、最後は寝ていたそうですね。その時に、遊木様に寝ぼけて……」
……………あらまぁ、そこまでバレてたとは。
私はやばいと思いつつその時のことを思い出していた。