第32章 大変なことになりました 伏見弓弦
「あんずちゃん、伏見に好き言われたことあると?」
「………はえ?」
旅館に到着!とはしゃいでいた私にコソコソ話しかけてきた真冬さん。
それはかなり痛い質問で……
「ふぅ~ん。無かね。」
「ウッ………」
反応だけでわかったらしい。
確かに、告白は私から。彼は頷いただけ。………確かに言われたことなどないけども!!
「不安になったりせんね?」
「べ、別に…。私は…」
図星だ。言い訳が思いつかず、ソーッと目をそらした。
「は、早く行かなきゃ!点呼始まりますよ~!」
苦笑いでその場を去った。
確かに弓弦くんって本当に私が好きなのかしらとかたまに思うけど………
思うけど、弓弦くんから好きじゃないとか言われるのが嫌だから……
確かめる事が出来ないでいるのだ。
「伏見~ッ!!」
あんずに逃げられた真冬は、伏見に声をかけた。珍しいことなので、周りがざわつく。
「どうなさいましたか?」
ニッコリ笑う彼の手にはカメラ。
今日撮った写真を伏見に見せていく。
「あんずちゃんの写真ばい。彼女と回れんで寂しがっとる思ったけん、変わりにたくさん撮ってやったとよ。」
「お心遣い感謝いたします。…………どれも、愛らしい写真ばかりですね。」
伏見が微笑む。
真冬はそれを見てニヤリと笑った。
「これは抹茶パフェを氷鷹と食べとるとこ……大きすぎて一人じゃ食べられんかったと。んで、神崎と着物借りて記念に撮って~……」
それを隠すように愛想よく笑い、写真の説明をしていく。
その間に伏見の顔が暗くなっていくことに気付き、彼はバレないように再びニヤリと笑った。