第4章 全力放置 朔間凛月
「兄者!」
「おぉ凛月!凛月から会いに来てくれるとは嬉しいのう。吾輩、涙が出そうじゃわい。」
「キモ…。それより、茜は?どこ?」
思わぬ訪問者に零は喜びの笑顔を見せた。しかし凛月の態度は素っ気ない。
「凛月、お兄ちゃんじゃよ!!」
「ちょっと、聞いてる?茜は?いるのはわかってるの。早く出してくんない?」
イラついた凛月の様子に零はふふふと怪しく笑う。
「さぁのう。吾輩、物忘れが激しいのでな。」
「ふざけないでよ、茜はどこ?」
「そうじゃのう。凛月が吾輩をお兄ちゃんと呼び抱きついてくれれば思い出すかもしれんのう。」
「するわけないでしょ!」
むっとした凛月は大きな声で叫んだ。それと同時に棺桶からガタンと音がなった。
「茜……?」
「起きてしまったかの…。凛月や、嬢ちゃんが多忙を極めているのはわかっておるじゃろう。こうして休ませるのがよいのじゃ。」
「だからって兄者の棺桶で寝る必要はないでしょ!?茜!」
凛月が乱暴に棺桶を開けると驚いて目を見開いた茜の手を掴んで棺桶から引っ張り出した。
「え、ええぇぇぇ……!!」
強い力で引っ張られて茜は半泣きだった。それを見かねた零が凛月に声をかける。
「凛月、待つのじゃ」
「うるさいっ!もう二度と茜に近づかないでよね!!」
乱暴に扉を閉める凛月。その音にさえ茜は驚き短い悲鳴をあげた。
「ほら、行くよ!」
「でも零さん……私のために睡眠時間けずってくれたんだよ?」
凛月くんは何も言わずに更にグッと私の手を強く握ってズンズン歩いた。
私は力の限り凛月くんに握られている手を動かしたりしてなんとか引き離した。
でも、そのとき振り返った時の凛月くんの顔が怖くて
気づいたら私は何も言わずに逃げ出していた。