第30章 贖罪 紫之創
「ね、楽になろうよって言ったでしょ?」
ひなたはケラケラ笑う。何が?何がなの?
「あんずちゃんは創くんにどうしてほしいの?」
「………もういい。もう、いいの。」
「全然良くないよね。」
去ろうとする私の手をひなたが掴む。
「正直に言ってごらんよ。」
「駄目だよ。だって私なんかが、そんなこと言ったって聞いてくれない。現に今も聞いてくれなかった。」
「だから、言ってみるだけで良いんだよ!」
何を言ってるのか分からず、首を傾げる。
「言ってみるだけなら大丈夫でしょ!?ここに創くんはいないんだしさ!!」
「…………言ってみるだけ」
「そうそう!!」
ひなたの勢いに負けて、正直に言ってしまった。
「紫之くんと友達に戻りたい。小さい頃みたいに、仲良く。」
ひなたはニッコリ笑って、ゆっくりある方向を指さした。
「予行練習終わり!!行ってらっしゃい!」
「……え」
「ほら、直接言って来て!!ガーデンテラスにいるから!!」
トン、と背中を押された。振り向くとひなたは頑張れと言わんばかりにガッツポーズ。
………騙された
とりあえず行こう。紫之くん、これからライブだし。
ひなたの言うとおり、放課後の誰もいないガーデンテラスには紫之くんがテーブルに突っ伏していた。
「紫之くん」
顔を上げた彼の目には涙がたまっていた。
「頼ってなかったわけじゃないの。」
唐突に話しだした私に彼は目を見開く。涙が一粒こぼれた。
「迷惑を、かけたくなくて。あのときの、友達でいたかったから。私は、君と仲良くしたくて………。
右足のことなんてなしで、本当に、普通の友達に……なりたかったから。」
それを聞いた紫之くんがボロボロと泣きながら微笑む。
少し、驚いた。
「僕も…………僕も同じです。だから、もう一度…もう一度、友達から………」
「……もちろん。やった、やっと言えた。」
ニッコリ笑えた。
ひなたの助けもなくちゃんと笑えた。
きっとこれから、たくさん笑えるだろう。
なぜかそんな確信があった。