第30章 贖罪 紫之創
「おや?彼もいたんですか?」
先生が私の後ろを指す。振り返ると、紫之くんがいた。
「……いたの」
私が聞いても何も答えない。
「どうしてそこにいるのですか?」
先生が尋ねたら、彼は口を開いた。
「………心配だったので」
弱々しく答える彼に、先生は黙って頷き普通科の女の子たちを連れて去って行った。
「ごめんね、心配かけて。あらかじめ先生を呼んでおいたから大したことはないだろうと思っていたけれど。疫病神はひどいよね。」
気まずい沈黙が嫌で、そう語りかけた。
「…………で………?」
紫之くんが何か呟いた。
「何?何を言うつもりなの?君も私を馬鹿にするの?」
そう言うと紫之くんは違う、と首を振って消え入りそうな声で
「………何で、頼ってくれないんですか………?」
「……………何、言ってるの?」
そう聞くと何かが切れたように、彼は話しだした。
「そんなに僕が嫌ですか?僕のせいで右足がそんなことになったから!?そのせいで馬鹿にされるから!?僕は、あのときからずっと……………ずっと」
「やめてッ!!!!!!」
自分でもビックリするぐらい大きな声が出た。紫之くんも目を見開いている。
「違う」
私は首を振る。全てが違う。全く違う。
「どうしてわからないの、私は右足のことなんてどうでも良い。放っておいてほしいの。何も言わないで、お願いだから。
私は君と友達でいたいだけなの。」
最後の言葉を紫之くんは聞かなかった。話の途中で、どこかに行ってしまった。
全然上手くいかない。全然。
右足のせいだ。こんなものもういっそのことなければ良かったのに。
「………馬鹿馬鹿しい」
「何が?」
私の独り言に反応する者が一人。
「君もどうしてここにいるの…ひなた」
あんずの問いに、たまたまだよと彼は答えた。