第30章 贖罪 紫之創
「遅いぞ創ちん!!」
「はやくはやく!!!」
rabbitsの皆が呼んでいる。衣装に着替えた彼の背中をソッと押した。
「紫之くん、泣いてちゃ駄目だよ。ライブだよ?」
「だって、嬉しくて……」
彼は目を真っ赤にして泣きじゃくる。それでも泣きやまなければ、と必死に耐えている。
「………そういえば、時間って…」
彼が呟いたとき、私達は気づいた。
ライブの10分前だということに。
「どどうしましょう!?うわぁ、遅刻しちゃいます!!事前の打ち合わせもできなかったし……!」
「取りあえず落ち着いたら?」
変わらず冷静な私に、彼はあり得ないと言いたげな顔をした。
「10分あれば、間に合うよ。」
だから落ち着いて、となだめて彼は慌てて着替えに行った。
着替えた彼と講堂まで走り……たかったがむり。先に行ってと頼んだが、彼は私を無理やりおぶった。
「ステージ袖から、見ててください!」
「…紫之くん、いつから私をおぶれるほど逞しくなったの。」
恥ずかしいので、背中に顔を埋めた。
彼は男ですから、と陽気に笑う。
そしてようやく講堂のステージ袖にたどり着き、暴投に至る。
ステージにのぼる彼は、直前で振り向いた。
「見ててくださいね!あんず!!」
「行ってらっしゃい、紫之くん」
私達は笑い合った。
まるで、あのときのように。