第30章 贖罪 紫之創
『放課後 講堂裏』
どうやら来いってことらしい。
…………今日の放課後は、rabbitsのライブがあるんだけど。
まぁ、相手にすることもないかな。
私は手紙を制服のポケットに押し込んだ。
「何て書いてあったんですか?」
紫之くんは隣の席だ。にこやかにそう聞いてきた。
「………女の子の手紙の内容を聞かないで」
言うわけにもいかないので、誤魔化した。彼はワタワタと、謝罪してくる。
………謝らなくても良いのに。嘘をついてるのが心苦しくなる。
「あんずちゃんはさ、どうして創くんと一線を引いちゃうの?」
最後の授業の美術の時間に、ひなたが突然そう言いだした。
似顔絵を描くから、ペアを作って向かい合う体制なので皆ワイキャイはしゃいでいる。
なのでこの会話は誰にも聞こえていないだろう。
それに、ペアとなった真白くんと紫之くんは私達からとても遠いところにいる。
だから答えることにした。
「……やっぱり、私の態度はよそよそしい?」
薄々気づいてはいた。私は、紫之くんが一線を引いていると思っていたが、最近は歩み寄る彼を私が突っぱねているような感じがあったから。
「うん、だからどうしてかなーって。」
「………わかんない。仲良くしたいのに、上手く………できないから。」
ひなたは眉を寄せる。似顔絵を描いているのだから表情を変えるのはやめていただきたい。
「あんずちゃん、ニコッて笑ってみて!」
「嫌」
「即答!?でも、どうせなら笑ったあんずちゃんが描きたいなーなんて!」
ひなたは俺の真似して、とニッコリ笑う。だから、表情を変えるのはやめていただきたい。
「…知ってるでしょ。感情の表現は苦手なの。」
「どうして?あんずちゃんはいつから笑わなくなったの?」
ひなたは本当に遠慮がない。
私はやれやれ、とため息をついた。