第30章 贖罪 紫之創
「うーん、でもほら。紫之くんは優しいから。あ、ひなたもだよ。甘えすぎは良くないかなって。」
彼はそういうことじゃない、と首を振る。朝早い教室には、まだ人が来る気配はない。
「甘えるっていうか、頼ったら良いんじゃない?」
そう言われて、私は押し黙った。
「……あまり、そういうことはしたくない。」
「どうして?」
ひなたは遠慮なく聞いてくる。この勢いに負けて全部話しちゃうんだよな…
「申し訳ないから。私なんかが頼ってしまえば、迷惑をかけてしまうから。」
「そんなことないよ!迷惑なんて思ってたら、あんずちゃんのそばにいないでしょ?」
ひなたはそう言ってくれる。優しい。本当に。
「…そりゃ、あのときのこと忘れろとか言えないけど…………もうちょっと、楽になろうよ。」
「…………私の右足は、ちっともいうことを聞いてくれないのに?」
少し嫌みったらしかったかな。考えてから後悔した。
「………………それは」
ほら、ひなたが困ってる。
「…ごめん。忘れて、全部。本当にごめんなさい。」
私は右足を引きずって自分の席に座った。ひなたはもう話しかけてこなかった。
「おはようございます」
しばらくして、登校してきた紫之くんと真白くんが話しかけてきた。
私もおはようと返す。
「あれ、どうしたんですか?顔色悪いですよ?」
「…………別に」
ひなたにも聞かれたし、もう一度言うのは面倒くさい。
素っ気なく答えた。
「あぁ、そういえばさ。」
真白くんが唐突に真っ白な封筒を出した。
「あんずに渡してくれって、頼まれたんだ。」
「………誰に?」
「友達じゃないか?女子だったし。」
黙ってその手紙を受け取った。
明らか、私を良い目で見ない普通科の子達からの手紙だった。