第30章 贖罪 紫之創
「……お待たせ」
「あんずちゃん、何の用だったの?」
無邪気な天満くんに、仕事の話だと伝えた。
あんな事話したら、紫之くんが更に自分を責めてしまうかもしれないから。
「あの、友也くん達と話してたんですけど……寄り道していきませんか?美味しいアイス屋さんがあるらしくて。」
紫之くんが話しかけてくれる。しかし、やはり態度がよそよそしい。
まあこれにも慣れた。
「うん、行く。誘ってくれて嬉しい。」
素直に伝えると、彼は笑った。
可愛いなあ、と失礼だが思ってしまった。
「………はぁ、はぁ…」
以外とそのお店は遠かった。いや、何てことない距離なんだろうけど………ほとんど左足で歩く私には大変だった。
店内のイスに座った瞬間、もう立てなくなった。
「大丈夫か?俺と光で買ってくるから、何味が良いか教えてくれ。創はあんずのそばについてろよ?」
「わかりました。僕は……苺味で。あんずは?」
「……………チョコバニラ」
「わかったぜー!ダッシュで買ってくるんだぜ!」
店内で走るなと注意する真白くんに襟首を掴まれ大人しくなる天満くんを見て、紫之くんがクスリと笑う。
「元気だね、天満くん。」
「そうですね~。」
「天真爛漫、って感じで……私は彼のこと、けっこう好きだな。」
僕も大好きです、と紫之くんが言う。本当に仲良しだな……。羨ましい。
「それにしても紫之くん、苺味は女子力高くない?」
「え!?僕男ですよ…」
「君は………」
今も昔も可愛いよ
言いかけた言葉をグッとのみ込んだ。さすがに昔の話はまずいか。
「……あんず?」
急に黙った私を心配そうに覗き込む。
「………何かあったんですか?僕で良ければ、話してください。」
「………何でもないよ。」
「本当に?」
「本当だよ」
迷惑をかけたくない。ただでさえ罪悪感を感じさせているのに。
誰も悪くないんだよ。そう、誰も。
悪いのは私。あの時も今もいつでも。
私が駄目、悪いの。ごめんなさい。
言えるはずのないことばかり心に浮かんでは消えていく。
「………………………どうして、頼ってくれないんですか」
紫之くんが呟いたその言葉は、決して私には届かなかった。