第30章 贖罪 紫之創
「はぁ~、終わった~!」
床に寝そべる4人に、スポーツドリンクを渡していく。ライブまで日がないもの。皆必死。
「あの、私プロデュースが終わったら来るように椚先生に呼ばれてるので、行ってきますね。」
「なら待ってるよ。一緒に帰りたいし。」
「俺も待ってるんだぜ-!な、創ちゃん!」
紫之くんはいつもの控え目な微笑みで答えた。仁兎先輩は用事があるらしく、すぐに帰った。
「……失礼します」
職員室に入ると、先生が難しい顔で私を出迎えた。
「あなた、最近困っていることはありませんか?」
「………?あり、ません」
右足で困るのはこの先永遠だ。一々言ってられない。…………紫之くんに、これ以上責任を感じさせたくもないし。
「……これが見つかったのですが。」
先生がスーツのポケットから出したのは、文字が乱雑に書き殴られたノートの切れ端。
そこには、私に対する悪口が書かれていた。
『右足引きずって鬱陶しい。心配してほしいの?』
正直、こんなことはしょっちゅうだ。この学院にきてからもよくある。
私は、すっかり慣れてしまって全く気にしていない。
この手紙は私の下駄箱に入っていた物だ。捨てたと思っていたのに、ゴミ箱に入らず床に転がっていたのだろうか。
「私は何とも思いません。右足のことで悪く言われるのは今に始まったことではありませんし。」
「しかし、これは教師としてはいそうですかとはならないんですよ。何かあったら、私に言いに来なさい。」
「…………はい」
話はそれだけ。私は、さっさと職員室から出た。
犯人は分かってる。普通科の女の子たちだ。
彼女達が大好きなアイドルと共に過ごす……右足を引きずる奴なんて、気に食わないに決まってる。
彼女達を責める気もない。誰も悪くないのだ。
そう、誰も。
誰も責めないし謝罪も求めない。
だから、そっとしといて____