第30章 贖罪 紫之創
「………よいしょっと」
プロデューサーは仕事が多い。
次のライブの衣装が届いたので、届けに行かねばならなかった。
右足をズルズル引きずりながらなので普通の人の何倍も時間がかかる。
まぁ、もう慣れたが。
それにしても重い。衣装が入った段ボールが邪魔で前が見えない。
「ワプッ」
「ウッ」
そらみたことか。誰かとぶつかってしまった。
尻餅をついてしまい、段ボールが床に落ちる。
「あの、大丈夫ですか?」
同じく尻餅をついたぶつかった相手、仁兎先輩に声をかける。
「俺は大丈夫だぞ、お前こそ大丈夫か?」
「はい。すみません、前見えてなくて。」
段ボールを拾おうとしたら、仁兎先輩が軽々と持ち上げた。
「謝るのは俺だよ。それにこれ、俺達の衣装だろ?」
「はい。すみません、落としてしまって。」
「大丈夫だって!ほら、この後プロデュースもあるだろ?一緒に行くぞ!」
と言い私のペースに合わせて歩いてくれた。申し訳なかったが、優しさに甘えることにした。
「おーい、衣装が届いたぞ~。」
先輩の声で、1年生の3人が可愛らしく駆け寄ってくる。
「わ~い!あんずちゃんもいるんだぜ~!今日もプロデュースよろしくだぜ!」
「光、あんずにそう抱きつくなって。」
私は、右足の自由が効かない分こけやすい。彼を支えきれずあっさり転んだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌てて手をさしのべてくれたのは紫之くん。その手を握ったが、それだけでは上手く立てないので体も支えて立たせてくれた。
「……ありがとう。ごめんね、迷惑をかけて…。」
「迷惑なんて……今のは光が悪いだろ。」
「うぅ、ごめん。あんずちゃん…」
と、最初はワタワタしていたがプロデュースがいつも通り始まった。