第30章 贖罪 紫之創
紫之くんと私は、いつも一緒。
ずっと仲良し。
でも………あの時から彼は、私のことをまともに見てくれなくなった。隣にいてくれて助けてくれるけど、どこか一線を引いている。
あんな事さえなければ、私達は____
普通でいられたのだろうか。
10歳の頃、私達はいつも通り遊んでいた。
「僕、この前とても可愛い子猫を見つけたので見に行きましょう?」
その日違ったのは、いつもの公園ではなく彼が子猫を見つけたという………古い工場(もう廃業して誰もいなかったが当時はそれを知らなかった)に行ったこと。
「……勝手に入って良いのかな?」
「見つかっても謝れば大丈夫ですよ。ほら、この子です。」
入り口で渋る私に彼が手招きしてくる。そこには可愛い小さな三毛猫がいた。
猫が大好きだったので、渋るのをやめて工場に足を踏み入れた。
カラン
そんな時に、聞き慣れない音がした。
音の方向を見れば、壁に立て掛けられていた金属の板が私目がけて倒れてくるのが見えた。
あぁ、これはもう駄目だ。
取りあえず動けなかったのと、私を呼ぶ紫之くんの声と………
鉄の板の下敷きになった、右足の痛みだけは鮮明に覚えている。
幸い、近くに大人がいて何事かと駆けつけてくれたのですぐに病院で治療は受けられたが…
私の右足は元通りにならなかった。立てないことも、歩けないこともない。
ただ一生右足を引きずって歩き、走れない体になった。
私は誰も責めなかった。
だって、しょうがないことでしょう?
それなのに紫之くんは………
ずっと、ずっと自分を責めて。ずっとずっと私に謝罪して。ずっとずっと気にしてる。
私の隣にいてくれるのは、もはや彼の中で……私の右足を傷つけたことによる罪悪感でしかない。
私は…………
あの時の、友達でいたいのに。