第28章 演劇部には近づかない方が良いかもしれない 真白友也
「あんずさん」
やっと制服を返してもらって、ぐったりしている私の元にやって来たのは日々樹さん。
「なかなか様になってましたよ?」
「ですが………全く慣れません。もう、金輪際やりたくないです………。」
日々樹さんはニッコリ笑う。またなんかやってくるなこの人…
「そういえば、真白くんと氷鷹くんは…」
「あなたがお疲れのようなので、購買に甘いものを買いに行ってくれましたよ。」
「あぁ…………すみません」
結局今日は何だったのか。本当に本当に疲れた。
「ところであんずさん」
「はい?」
グイッと腕を掴まれた。疲労でフラフラの私はそのまま引っ張られ、ボスッと日々樹さんの体に引き込まれた。
「あの……これ以上疲労を増やさないでもらえませんか?」
もはや抵抗するのも面倒くさい。日々樹さんの長い髪がサラサラと顔に垂れてくるのが鬱陶しい。
「男に抱きしめられているのに、随分な肝の据わり方ですね……。もしかして、この私を何とも思わないほど好きな誰かがいるんですか?」
サアッと血の気が引いた。慌てて日々樹さんを力の限り押す。
彼は大人しく離れた。
「…………意地悪な人、知ってたんですね…?」
「彼の演技力はまだまだですから!!」
日々樹さんはニッコリ笑う。あぁ最悪。もう本当最悪。
「……真白くんが付き合ってたこと黙ってた意味が今なら分かるかも。」
「おや、お相手は友也くんでしたか!」
「………………はい?」
「いやはや、半分以上冗談だったんですけどねえ………amazing!!今日は驚くことばかり!!咲かせましょう!二人のために愛の花を……!」
パクパクと口を動かすが声にならない。な、なんて意地悪な………!!
完璧に騙された……
「お、鬼…悪魔…!日々樹さんの馬鹿ッ………!!」
悔しいやら真白くんに申し訳ないやらで、その場にへたり込んだ。もう、どうやって彼に説明しよう……!
「…………………あんずさん?」
本当に今日はついていないらしい。
購買のお菓子やらが入ったビニール袋を持った二人が、部室の扉を開けてこちらを見ていた。
どうやら帰ってきたらしい。