第28章 演劇部には近づかない方が良いかもしれない 真白友也
私達は音速を超えた
日々樹さんたちがドアを開けるためにひねったドアノブの動きを見て、瞬時にお姫様抱っこから元に戻った。
「あのぉ、もう着替えても良いですか?」
夢は叶ったのだ。もう終わらせてほしい。
「駄目よ、今度は日々樹くんと!!」
この言葉に反応したのは真白くん。顔が真っ青だ。
それに反して日々樹さんは準備万端で私の手を取ってきた。
「さあさあ!今度は私のお相手をお願いします!!」
「……まさか日々樹さんの次は氷鷹くんとか言いませんよね?」
「安心してくれ、俺は全力で断った。」
私も全力で断れば良かった。日々樹さんは灰かぶりで氷鷹くんが着ていたような青い王子様衣装で薔薇をまき散らしている。
「さあ!撮るわよ!!」
私は覚悟を決めてカメラの前に立った。
「…………こ、こんな写真、撮って、どうするんですか…」
「ドレスのパンフレットに使うの!安心してね、プロデューサーのあなたの顔は編集で誤魔化すから!」
全然大丈夫じゃない。
なぜ私は日々樹に腰に手を回され、あごクイされる写真を撮っているのだ。
「ハイ、撮影終了よ!」
「終わりましたよ~大丈夫ですか?」
日々樹さんがパッと離れる。
何だかひどく疲れた。
するとそこに、真白くんがズカズカとやって来たと思えばバッと私をお姫様抱っこした。
私が云々言う前に
「すみません!撮ってください!!!」
と叫んだ。ハイ!?とか思う間もなく撮影は終了。
日々樹さんがニヤニヤして近づいてきた。
「どうしたんですか友也くん?ちゃっかり写真までもらってしまって!!」
友也くんはキッと日々樹さんを睨んだ。
「変態仮面より俺の方がかっこよくとれるって証明したんだ!!」
「あ、なるほど」
私はパン、と手を遭わせた。
日々樹さんはキョトンとしていたがいつも通りすぐに薔薇をまき散らしはじめた。