第27章 夢の話し 朔間兄弟 _女の子の日注意あり_
「……あれ、凛月くん……シロップは何味がいいのかなぁ?」
売店に行く前に、シロップの味を聞いてくるのを忘れたことに気づいた。
「嬢ちゃんや」
「あ、零さん」
ちょうど良かった。零さんなら凛月くんの好みを知っているかもしれない。
「凛月くんって、何味のかき氷が好きですか?」
「そうじゃな………小さい頃にイチゴ味を食べていた記憶があるのう?」
「わかりました、ありがとうございます!」
そのまま売店へと走る。寝たからかもうお腹の痛みはなかった。
「ねぇ!」
あと少し、というところで知らない男の人に声をかけられた。
「君可愛いね~俺たちと泳がない?」
その人の後ろにも何人かいる。
……………絵に描いたようなナンパだけれど、こんなことって本当にあるんだ…
「あの、急いでいるので…?」
「いいじゃん、いいじゃん。何かおごってあげるしさ!!」
羽風先輩を思い出した。あぁ懐かしいこの感じ。ここには隠れる棚もなければ、隠れた私に手をさしのべてくれる衣更くんもいない。
これはどうしようもない感じか……!
いつの間にか掴まれた絵を振り払うこともできず、その人達について行く。
どこかに連れて行かれそうなこの状況を何とかしなければと思うが、打開策など見つからない。
「…………おい」
そんな私達に、声をかける人がいた。
零さんだ。
「何だ、お前?」
「ソイツから手を離せ」
いつもと違う口調と雰囲気。零さんは私の腕を掴んでいる男の人の腕をギリギリと握った。
男の人達は私から手を離し、何も言わずに走り去っていった。それほど零さんが怖かったらしい。
「ふぅ、久々に若返ってしまうときついわい。無理はするものではないのう。」
「ご、ごめんなさい零さん……」
「嬢ちゃんが謝ることはない。………大丈夫かの?」
零さんが優しく聞いてくれる。
怖かった。それはもう、とても。
「わ、私………」
「…かき氷どころではないのう。いったん戻ろう。」
体の震えが止まらず、零さんに付き添ってもらいながらビーチパラソルへと戻った。