第25章 ありし日の僕ら 仁兎なずな
なずなくんから聞いたとおり、途中で音楽が止まって皆でアカペラで歌い出す……そして、Valkyrieは敗北した。
それでも
『ただ砕け散るだけでも』
『刻むのは傷じゃない』
『重ねたおもいの全て……』
それはもう、泣いてしまうほど………儚く、幻想的で…………
すばらしいステージだった
さてと、これからどうするか…家に帰っても一年前の私がいるだろうし。
とかなんとかで噴水でボケッとしていた。
かのぷかぷかさんは、いなかった。
夜だったが、星が綺麗なわけでもないので空も見ないでただただ地面を眺めていた。
噴水の音で聞こえなかったが………どうやら、誰か近付いてきていたらしい。眺めていた地面に、足が見えた。
着ている服からして………
「…………」
なずなくん、だった。ユニット衣装から着替えてもいない。
肩で息をしているのを見ると、走っていたらしい。ユニット衣装のリボンが歪んでいる。
「…………僕ねぇ、これで良いと思ってるよ。」
私は彼に向かって笑った。なずなくんは、急に笑って喋り出した私に驚いていた。
こんなに辛いことがあっても、一年後になずなくん達は笑っている。
三人一緒……では、ないけど。
それでいい、と僕は思う。
「ありがとう、なずなくん。感動のライブだった。………見られて良かったよ。妖精には感謝しないと。」
「………俺!」
彼が、ようやく声を発した。私は話したいことがまだまだあったが、止めた。
「過去に行って……あんずに会って……何で、僕って自分のことを呼ぶのかわかったんだ。」
今度は私がキョトンとした。この話の流れで、言われるなんて思わないから……。
「…………あんずは
やっぱり、自分のことを男の子だって思ってた。」
……だとしたら、僕はかなり最低な黒歴史を……いや、現在進行形で自分を男だと思ってる……のか?