第25章 ありし日の僕ら 仁兎なずな
「……つまり、入学したての頃になずな兄は妖精に会って過去に連れて行かれてあんずちゃんはついさっき妖精と会って同じく過去に連れてこられたってことでええん?」
案外素直に状況を受け入れてくれたみかちゃんにより
その場は何とかなりそうだった。
親玉さんだけ、納得出来なさそうだけど。
「全く、未来はどうなっている?なぜアイドル科に女子がいる?」
「全部話してあげたいけど、それを言ってしまうと未来のネタバレになってしまうので~?」
多分、それだけはやっちゃいけないことだろう。私は勝手にそう言い聞かせた。
「……全く、これからfineとドリフェスだというのに」
「おぉ!せやった!はよ準備せんと間にあわへん!」
それを聞いて…………戦慄した。
あの、恐怖のValkyrieのライブが始まろうとしている…………
「…………」
そんな私の様子に気付いたのか、なずなくんが袖をぐいぐい引っ張ってきた。
………なずなくんって、一年前はこんなに無口だったの?メールとかでやり取りしてたけど、こんな雰囲気だとは思わなかったなぁ。
「…………………大丈夫。未来の歯車は狂っちゃいけない。きっと、このままが一番良いんだ……」
「…?」
「ねぇ親玉さん。私もそのドリフェスって見られますか?」
ついつい心の声が漏れてしまって、慌てて話を逸らした。
「親玉さん……!?ふ、風情の欠片もない呼び方をするな!!ライブなんて好きに見に来たら良いのだよっ!!」
バシィッ!と床に怒りにまかせて叩きつけられたのはドリフェスのチケット。
風情の欠片もない渡され方をしたが、とりあえず受けとっておく。
「それじゃあ、ライブ前に失礼しました~。
あと、みかちゃん、親玉さん、なずなくん……どんなことになっても、絶対に……諦めないでくださいね。そして、辛いときは未来で僕を頼ってください。
気の利きたことは言えないけど、お話しくらいなら聞きますから。
僕は、未来で三人の味方だから……だから、絶対……絶対、どんなことになっても負けないで!!」
私は一方的に言葉をぶつけて、レッスン室を出た。一年前の学院は、今と変わらない。
さぁ………
会場に行かなければ。