第24章 無自覚は苦しい 乙狩アドニス
「ちょっと!?何があったの!?」
「やらかしたっす!!昨日の事件で姉御の名前がヤンキー界で広まったらしいっす!!」
面倒ごととは…
「待てやあんず組!!」
「よくもうちのもん可愛がってくれたな!?」
謎のヤンキー集団に追われていた。
昨日の二人組がお世話になってる集団のようで、よくバレずにここまで入れましたねと言いたくなるような物騒な方々で、女の子もいれば男の子もいるかなりの大所帯だった。
外で大人しく私を出待ちするだけならまぁ良いが、余裕で校舎内に入ってく追いかけてくるし、もはや手の打ちようがない。
「しかもあんず組とは!?」
「俺と姉御が師弟関係って思われてるらしいっす!俺の師匠は大将なのに~っ!!!ていうかこんなに騒いでるのに何で生徒会は来ないんすか~!!」
「今日は外部でライブがあるからあらかた出払ってるの~!」
「生徒会マジ使えないっすね…」
と呟いた鉄虎くんの顔を忘れることは出来なさそうだ。ブラック鉄虎くんを垣間見てしまった。
「あぁあ姉御!!行き止まりっす!!」
「うそ…っ!?」
目の前にはただの壁。どこか入れそうなドアも、逃げ出せそうな窓もない。
「手間かけさせやがって…」
後ろを見ると、廊下を埋め尽くす人数が私達を睨んでいた。
「こうなったら、やるしかないっすね…!!」
「駄目だよ、鉄虎くんはアイドルなんだから!」
「じゃあどうしたら…!?」
「私がやる。これは中学時代のツケだもん。きっちり片付けないと。」
目の前の大人数に、殴りかかろうと一歩踏み出したとき……!
「ヒッ!?」
「な、なんだ!?」
集団の後ろから、悲鳴が聞こえてきた。
背の高い彼は、すぐにわかる。
「ア、アドニスくん!?」
「……すまない、混乱している。これは何だ?」
彼にその気はないだろうが、相手はすっかり怯えきっている。
全員が怖じ気づいた今、チャンスだ!とばかりに私は鉄虎くんの手をつかんで集団の中を駆けぬけた。
「鉄虎くんをよろしく!」
アドニスくんに彼を預けて、私は別方向に走った。それに気づいた集団が、再び私を追いかける。
「面倒くさいなぁ本当…!!」
タオルもまだ干せてないのに。