第24章 無自覚は苦しい 乙狩アドニス
というかこれ、どこに逃げたらいいだろうか。というか、どこまで、いつまで追いかけてくるんだこの人達。
校内で暴力沙汰は起こしたくない。何とかして逃げ切らないと。
今日は休日だし、校内でこんなに騒いでも私達に気付く人なんていない。
それが吉なのか凶なのか、どちらにせよ………
そろそろ限界だ。足がピタリ、と止まった。もう無理。私は覚悟を決めて振り返った。
「あんた達…!!」
しょうがないし啖呵を切ってやろうとしたら………
急に浮遊感に襲われた。
「アドニスくん!?」
「喋るな、舌をかむぞ。」
それもそのはず、アドニスくんに肩に担がれていた。
突然背後から現れた彼に、やっとのことで声を出す。
「や、やめてよ!!中学時代の顔見知りもいるのにっ!!!」
「だから、舌をかむぞ。」
アドニスくんが飛んだ。
開いていた廊下の窓枠に足を一瞬かけて、外へ飛び出した。
「キャアーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」
信じられない!!ここ、三階なのに!!!
しかしアドニスくんは余裕で真下にあった木の枝に着地し、枝が折れる前に地面に着地した。
「あ、アド、アド、アドニスくん…!三階、飛び降り、あ、あう、あう………!」
「すまない、舌をかんだか?しかし、早くしないと…」
アドニスくんが指さす方には、三階から階段を下りてこちらへ向かってくるヤンキー集団が見えた。
「とりあえず、どこかに隠れよう」
彼は側にあった窓から1階の空き教室に入っていった。そろそろ肩から下ろしてほしいし、当たり前のように窓から出入りするのはやめてほしい。
「む、郊外と校内で別れて探し始めたな。」
教室の外からヤイヤイ聞こえてくる。もう来たらしい。窓の外にも、ヤンキー集団が見える。
そして、彼はあり得ない行動に出た。
掃除の用務員さんが使う掃除ロッカーを開けて、私を中へ押し込んだ。
この教室のロッカーには、ほとんど使われてないし掃除もされてないので掃除道具は入っていない。
確かに隠れるところはロッカーしかないが…押し込むのはひどい。
「よし」
何がよしだ!と叫ぼうとしたが、声が出なかった。
アドニスくんも中に入ってきたからだ。