第23章 君が大好きな私へ 氷鷹北斗
何とか泣きやんで感謝の気持ちを伝え、授業をサボってしまったことを謝った。氷鷹くんは、構わないと言ってくれた。
しかし、反省文の出来が不満だと言う。私は、授業に戻ると言って彼と別れた。
そんな気、全くない。
教室ではなく、屋上へと向かった。
屋上には誰もいない。授業中だし、当然か。
『死なないでくださいね』
日々樹さんに、そんなことを言われた覚えがある。
別に、死ぬつもりなんてさらさらない。ただ、その時は……屋上の手すりの向こうに、綺麗な鳥が飛んでいたから身を乗り出していただけだった。
日々樹さんはそれを分かっていながら冗談めかしてそう言ったのだ。
『………私屋上で靴を…』
何か、こんな歌があった気がする。
『脱ぎかけたときに』
何だったかな、この歌。上靴を脱いで、手すりに手をかける。グッと下を見下ろして身を乗り出す。
『三つ編みの先客に声をかけてしまった』
思い出す前に、死んでしまおう。
日々樹さんが…私の側にいてくれたのは、きっとこのことに気付いていたからではないだろうか。
ほっといたら私は死ぬ
それは大正解だ。
私は悲観的すぎる。フラれただけで一週間も仮病を使うし……。
まぁ何があろうとなかろうといつかはこうなっていただろう。どこかで悲観的に考えすぎて、死ぬ。
なぜ今飛び降りようと思ったのか……よくわからないが、多分日々樹さんのことを話してスッキリしたのだろう。きっと。
『ねぇ』
歌の続きが流れ出す。それと同時に。
「やめろ!!」
『やめ…_なよ』
氷鷹くんの悲痛な叫びが聞こえてきた。思わず、身を乗り出すのをやめてしまった。
「氷…鷹くん」
「やめろ!頼む!!やめてくれ!!」
「無理だよ、私は!!」
続けて何か言う前に、氷鷹くんは私に一輪のバラを差し出してきた。
「部長が何を思っているのか、よく考えてみろ!!」
「…私が、弱いから側にいてくれていただけよ!!私のことが好きだとか嘘だったかもしれない…」
「違う!!!お前は逃げすぎだ!!もう少し、面と向かい合え!!!」
氷鷹くんが、バラの花びらを1枚ちぎって差し出してきた。
バラには、何で書いたのか……文字が書かれていた。
愛しい人へ 大好きです